無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
「そんなにかっこいいなら、近くで見れば」
「なっ、なに言ってるの……っ?」
「特別に、凛李には近くで見せてあげる」
善から離れてみるけど背中が壁に当たってしまい、それ以上もう逃げられない……。
これだけ近いともはや直視できないんですけど。
「もういいよ、ありがとっ、もう十分見たから……っ」
「もうしばらく見られないかもしれないよ。目に焼きつけなくていいんだ?」
「……焼きつけた、焼きつけた!もう忘れられないくらい見たから、もう離れて……っ」
私は善の胸を必死に押し抵抗する。
それでも善は目を凝らして見ないとわからないほど、わずかに口角を上げおもしろがるように私を見下ろしてくる。
心臓の音がどんどんと大きくなっていくーーちょうど、そのときだった。
「柊木くん、あのね……」
その声と共に現れたのは、さっきコップを割ってしまったかわいすぎる女の子だった。