無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
《もしもし》
「凛李だけど……善?」
《おう》
すぐに電話に出てくれた善の声は……電話越しだからか、やけに優しく聞こえてドキドキする。
……それに、なんだか耳元で話されているような感じがしてくすぐったい。
「刀夜くんから連絡先聞いたの。今日、いつもより遅いから何時ごろ帰ってくる?ってお母さんが……」
《あぁ。悪い。唯(ゆい)さんに謝っといて》
唯さんとは私のお母さんの名前で、なぜか善は最初からお母さんのことを下の名前で呼んでいる。
理由を聞いてみたら、「俺のお母さんじゃないし、凛李のお母さんっていちいち呼ぶのもめんどくさいから」と、善らしい答えが返ってきた。
《今、峰本(みねもと)送ってるから、それ終わったら帰る。たぶん10時までには着くと思う》
「峰本って……バイト一緒の?」
《そう。峰本 由湖(みねもと ゆこ)。ていうか、これ凛李の番号?》
「そうだけど……」
《了解。電車乗る前に電話する》
そう言って電話を切られてしまった。
別にフルネーム聞いてないのに……そう思いながらも、峰本さんの顔を浮かべてしまう。