無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
「待って待って……若菜さんって、こんなに美人だったの?」
前髪をピンで留め、その子と向かい合うように座った。
ファンデーションを塗るときにその子がテンションを上げながらそう言ってきた。
お世辞を言ってくれるなんて、とても優しい人だ……。
アイシャドウ、マスカラ、チークと……メイクがひと通り終わり、最後にカシスピンクという色のリップを塗ってもらった。
「え……若菜さん……めちゃくちゃかわいいんだけどー……!」
メイクをしてくれた女の子がそう叫ぶと……私たちの周りにクラスの女の子たちが集まってきた。
まるでめずらしい生き物を見るかのように、私をジロジロと見てくる。
「ほんとに若菜さんっ⁉︎メイクしたほうが絶対いいよ!」
「かわいすぎる!ねぇ、一緒に写真撮ろう!」
たくさんの女の子に囲まれチヤホヤされるのは初めてだけど、この状況……なんだか既視感がある。