無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
善は狼の耳をつけて、黒のロングTシャツにデニムを履いている。
頬や口周りには血のり、口にはつけ牙までついている。
……善のクラスはたしかお化け屋敷だった。
どんな格好も似合ってしまうんだから羨ましい。
「あの、ありがとう……おかげで助かった」
善のおかげで安心した……はずなのに、なぜか手の震えが止まらない。
「……ちょっとこっち来て」
「え……? 善……?」
善に突然手を繋がれどこかへと連れていかれる私。
「どこ行くの?」と何度聞いても、善はなにも答えてくれない。
無言で歩かされたどり着いた先は……奥にある空き教室だった。
イスや机は他の出し物で使われているのかほとんどなく、どこかのクラスの荷物がはじに乱雑に置かれていた。
教室に入った瞬間、善がドアのカギを閉める。
え……っ、な、なんで……⁉︎
ドアの目の前で立ち止まりあたふたしている私を、善が後ろから優しく抱きしめてきた。
突然のできごとが続きすぎて、私の思考回路は完全に停止し、ただ身を任せることしかできない。