無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。

「これがどういう意味なのか、がんばって考えるといいよ」



少しだけ口角を上げて笑う善はそう言って、教室から出ていってしまった。

1人取り残された私。

……今……私、キスされたんだよね……?

ファーストキス……だったんだけど……。


善の言葉を思い出す。

善の気持ちってなに……?
キスした意味ってなに……?


そういえば、私のことをかわいいと言ってくれてた。

かわいいからキスしたってこと?

でもそれなら善の口から聞いたからわかっている。

……じゃあ、私が気づいてない善の気持ちっていったい……。


そんな風に頭の中で考えているうちにあっという間に文化祭の1日目が終わってしまった。

家まで1人で帰るときにも、お風呂に入ってるときにも、寝る前にもずっと善の言葉の意味を考えていた。

善は幸いにもバイトで家にいなかったので、顔を合わせないようにお風呂を上がってからは部屋から出なかった。



ーーまさか、善も私のことを好き……?

最終的にそんなありえないことが頭の中に浮かび上がり、私は必死に消すように無理やり眠りについた……。

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