無気力なあざといくんは真面目ちゃんを離してくれない。
チラッと善の顔を見てみると……少しだけ怒っているように見える。
「昨日、俺が言ったこと忘れたの?」
「……っ」
「かわいいんだって自覚持てるまで、耳元でずっとささやこうか?」
「んんー……っ!」
すでに私の耳元に低く甘い声でささやく善は、私の口から手を離さず最後に息をフーッと吹きかけた。
私はくすぐったくて、反射的に善の体を押して突き離した。
「わかったから。耳だけは、本当にやめて……っ」
「なんで?」
「……へ?」
「耳、弱いんだ?」
「くすぐったいからだよ……」
「それって、気持ちいいってことでしょ」
「き、きも、ちいい……っ⁉︎ちょっと、こんなところでなに言ってるの……⁉︎」
「ははっ、顔真っ赤」
普段はめったに笑わない善が、顔がくしゃっとなるほど嬉しそうに笑う。
……からかわれてるのはわかっているはずなのに、私はその笑顔から目が離せなかった。
ーーあぁ、この人のいろんな顔を見てみたいなぁ。
そんなふうに思ってしまったのだ。