バースデーカード
友人たちはみんな一瞬驚きで言葉を失い、次の瞬間には大きな笑い声をあげていた。


新本人も笑っている。


『鞄ごと忘れてくるヤツ初めてみたぜ!』


紀一がお腹を抱えて笑う。


幹生も、和樹も、笑も、千秋も。


見た目よりもずっとドジな新に大笑いした。


『あたしが貸してあげるよ』


みんなが笑っている中、若菜が真新しいノートとペンを新に差し出した。


『え、悪いからいいよ。このノート使うつもりで買ったんだろ?』


『3冊セットのを買ったから大丈夫。でも、教科書は他のクラスの子に借りてね』


若菜がそう言うと、新は申し訳なさそうに頭をかいて、ノートとペンを受け取った。


「結構ドジだったよね」


当時のことを思い出して、ふと笑っている自分に気がついた。


こんな状況で笑えるなんて思ってもいなかったからびっくりした。


「新はムードメーカーだったよな」


和樹が言い、若菜が頷く。


当時の光景がどんどん思い出されてきて、胸が押されたように苦しくなった。


新はもうこの世にいないのだと、あらためて突きつけられた気分になった。
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