バースデーカード
ドアのすりガラスの向こうに人影が見えている。


立ちどまった影は音もなくこちらへと体の向きを変えた。


そして勢いよくドアが開かれた。


立っていたのは新そっくりな人物だった。


若菜が息を飲む音が聞こえてくる。


しかし、その手にはしっかりとモップが握りしめられている。


新に似た人物の右手には血に濡れた包丁が握りしめられていた。


あの包丁ですでに4人も殺しているのだ。


そう思うと恐怖で体が震えた。


立っているのがやっとの状態だったけれど、あたしは新に似た人物から視線をそらさなかった。


いつ、どのタイミングで襲ってくるかわからない。


目をそらしたらその隙に死んでしまうかもしれない。


そんな危機感を抱いていた。


「みんな、ここにいたんだね」


その声は新にそっくりで一瞬動揺してしまう。
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