バースデーカード
☆☆☆

「結子、今日まっすぐ帰るのか?」


すべての授業が終わってみんな帰り始めた時、和樹に声をかけられたあたしは足を止めた。


今まさに教室から出ようとしていたところだ。


あたしの隣には若菜がいる。


「あ、えっと……」


あたしは若菜と和樹を交互に見る。


特に予定はないけれど、若菜とは家が同じ方向だから一緒に帰るのが日課だった。


「じゃ、あたしは先に帰るよ」


若菜がニコッとほほ笑んでそう言った。


「え、いいの?」


「いいもなにも、予定はないんだからさ」


そう言ってあたしの背中を押す。


「そ、そうだね」


「じゃ、また明日ね2人とも」


若菜は1人で教室を出ていく。


その後ろ姿を見送ってから、あたしは和樹に視線を向けた。


7人でいるときは普通に話しかけることができるけれど、こうして2人になると途端に緊張してしまう。


うまく目を見ることができなくて、あたしは和樹の鼻先を見つめることにした。
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