バースデーカード
声も顔も新たにそっくりだなんて……。


惑わされないよう、あたしは相手を睨みつけた。


新に似ている人物は相変わらず笑顔を貼り付けている。


人間味のない笑顔はひたすら気味が悪いだけだ。


新に似た人物が一歩近づいてきた。


瞬間的に身を固くする。


写真を確認するために窓辺に移動しているから、後ろに逃げ道はない。


逃げるなら、横に移動していくしかない。


あたしは教室後方のドアに視線を移動させた。


あそこまで走って逃げるとしても、机と椅子が邪魔になることは必須だった。


その間に追いつかれてしまうかもしれない。


となると、やはり戦うしかない。


あたしはまた唾を飲み込んだ。


何度唾を飲んでも喉はカラカラのままで潤うことはない。


新に似た人物がまた近づいた。


「お前は誰だ!」


和樹がモップを振りかざして言った。


新に似た人物はその質問にニヤリと口角をあげた。


目元まで歪み、この状況を心底楽しんでいるように見えた。
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