バースデーカード
大きな声を上げて上半身を起こす俺を、お母さんが慌てて押しとどめた。


『入学式してきたよ!』


新が嬉しそうに言い、鞄を開けてみせた。


中には沢山の教科書が入っていて、紙の匂いがした。


『入学式、僕も行きたい!』


『ダメだよ。入学式はもう終わったんだから』


新の言葉に俺の気持ちは急速にしぼんでいった。


パンパンに膨れ上がっていた期待が、一瞬にして割れてしまった感じだ。


泣きそうになっている俺を見て、お母さんが手を握り締めてくれた。


『これから、ここで入学式しようか』


提案したのはお父さんだった。


俺はパッと顔をあげて目を輝かせた。
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