バースデーカード
『ここで?』


『あぁ。旬のための入学式だ』


そう言ってもらえて本当にうれしかった。


俺だけの入学式だなんて夢みたいだった。


担当の先生も了承してくれて、看護師さんたちも俺の病室に集まって、みんなで拍手をしてくれた。


『新入生の森戸旬くん』


お母さんが俺の名前を呼んで、俺はベッドの上で背筋を伸ばして右手を大きく上げた。


『はいっ!』


元気に返事をすると少し胸の辺りが痛んだけれど、それも気にならないくらい嬉しかった。


『入学おめでとう』


みんながお祝いしてくれた最高の入学式だった。


それからお父さんが持って帰ってきてくれた教科書を、新と一緒に開いてみた。


簡単な文字なら読めたけれど、まだまだ難しい。


早く学校で勉強してみたいなぁ。


そんな期待を膨らませたのだった。
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