バースデーカード
そして、数日後。


『ねぇ、まだ学校に行けないの?』


俺は窓の外に見えている小学校を見つめて、お母さんに聞いた。


お母さんはリンゴを剥く手を止めて『もう少し、頑張ってからね』と、ほほ笑んだ。


入院してから4日ほど過ぎていたけれど、毎日何かの検査をされるばかりでなかなか学校に行けないでいた。


新は学校が終わったらすぐに来てくれて、学校でなにがあったのか話しを聞かせてくれた。


勉強したことも教えてくれたし、一緒に宿題もした。


担任になった先生が来てくれたこともあったけれど、ここは病院で、学校じゃなかった。


『今日はね絵を描く授業があってね。美代ちゃんと浩太くんの絵がすごく上手でね!』


ベッドの横で飛び跳ねながら嬉しそうに報告してくれる新。


最初のころはそれが嬉しかった。


新と俺は同じクラスになれたと聞いていたから、自分も早く学校へ行きたいと思っていた。


学校へ行ったらクラスのみんなと沢山遊んで、勉強も沢山するんだと、意気込んでいた。


だけど、ある日から次第に新からの報告が嫌になってきてしまった。


『絵なんて興味ない!』


嬉しそうに話す新に怒鳴りつける。


新は驚いて言葉をきり、マジマジと俺を見つめてきた。


今まで俺が怒鳴ったことなんてないから、本気で驚いたみたいだ。
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