バースデーカード
『新、旬はちょっと疲れちゃったみたい。寝かせてあげてね』


すぐにお母さんが俺たちの間に割って入ってくれた。


俺は寝返りを打ち、新に背を向けて布団をかぶった。


『うん……』


新は頷いていたようだけれど、その声はとても悲しそうに聞こえた。


それから数日後。


俺はまだ退院のめどがついていなかった。


新は相変わらず毎日来てくれるけれど、あまり学校の話はしなくなっていた。


俺が怒鳴ってしまったからだった。


時々俺から学校について質問すると、新は質問された答えだけを、おずおずとしゃべった。


悪いことをしたなという気持ちはあったけれど、せいせいした気分にもなった。


自分が経験できない学校生活のあれこれを、あんなに楽しそうに聞かされていたら、頭がおかしくなってしまいそうだったから。


どれだけ学校生活に恋い焦がれてみても、俺から見える世界は白い病室に自分に繋がれている機械。


せいぜい窓から見える変わり映えしない景色だけだった。
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