バースデーカード
この頃になると新が病院を訪れる回数は増えていた。


意識的に来ているのだとすぐにわかった。


『彼女とデートは?』


と聞くとしかめっ面をして『別れた』と、短く答えた。


嘘じゃなさそうだった。


一瞬俺が原因になったんじゃないかと不安がよぎったけれど、中1年生のころから今まで付き合っているのだから、長かったんじゃないかと思いなおした。


それから本が出版されて、日記のコメントは更に増えた。


だけど毎日の更新はできなくなっていた。


自分の気分のいい時だけ。


それも両親や新にお願いして打ち込んでもらうことで、どうにか日記を持続することができた。


2冊目の本も、1冊目同様によく売れた。


累計120万部を突破したと連絡が来たとき、俺は嬉しいというより安堵した。


両親にお金を話しをすることはなくなったけれど、これでしばらくは家族3人で幸せに暮らせるはずだ。


家族3人……。


その中に自分は含まれていなかった。


このままドナーが現れなければ俺は死ぬ。


そしてその日は確実に近づいてきていると、わかっていたから……。
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