バースデーカード
『そうだよ。今度は君が明るい未来を歩く番だ。双子なんだから、半分づつ分け合って当然だろ?』


双子だから、分け合って当然……。


グラリと視界が揺れた気がした。


男の言葉が呪いのように頭の中にこだまする。


聞いちゃいけないと思うのに、男は話かけてくる。


『俺がどうにかしてやる。弟の臓器が君に移植されるように、手伝ってやる』


やめろ。


なにを考えてるんだ。


そう言いたいのに、声がでない。


男の誘惑に頭の中が汚染されていくのを感じる。


『君は金だけ用意すればいい』


男の声に、気がつけば頷いていた。


俺は金だけ用意すればいい。


皮肉なことに、金なら掃いて捨てるほどあった。


『待っていろ。約束は果たすから』


男の声が遠くに聞こえて、俺は意識を手放した。
< 167 / 180 >

この作品をシェア

pagetop