バースデーカード
『だから、新の臓器を旬に移植することになるかもしれない。すぐに準備をしましょう』


『ま、待ってよ。どういうこと?』


混乱して、話しが全く理解できなかった。


新が事故?


おそらくはダメ?


移植?


頭の中で単語を並べたとき、男の顔を思い出していた。


まさか……!


『お母さん、新は今日学校じゃなかったのか? どうして交通事故なんて!』


『お母さんにもわからないの。新はいつも通り家を出て学校に行ったはずなのに……』


きっと、あの男が新に接触したのだ。


そして何らかの方法で今まで引き止め、交通事故を起こした……!


すべては俺の空想だった。


だけど目には見えない確信があった。


新はあの男に殺された。


ドクンッと心臓が高鳴った。


嫌な汗が流れていき、苦しくて胸を抑え、体のくの字に曲げて喘ぐ。


涙が滲んできて視界が歪んだ。


お母さんの叫び声が聞こえてくる。


そして俺はまた、自分の意識を手放してしまったんだ。
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