バースデーカード
次に目が覚めた時、とても穏やかな気分だった。


いつもの病室。


いつもの窓の外の景色。


ただ少し胸のあたりが痛かった。


『旬、気がついたのね』


顔を向けるとお母さんが立って、俺の顔を覗き込んでいた。


『おか……あさん』


声は自分のものじゃないくらいに枯れている。


それでも清々しい気分のままだった。


まるで生まれ変わったような気分。


そこまで考えてハッと我に返った。


『新は?』


そう質問をしても両親はなにも答えなかった。


気まずそうに顔をそむける。


嫌な予感が胸をよぎる。


『まさか……』


『まだ、生きてる』


お父さんが俺の言葉を遮ってそう言った。


その言葉にホッと息を吐いた。


新はまだ生きている。


事故に遭ったけど大丈夫だったということだ。


よかった。


しかし、次に言われた言葉で氷ついた。
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