バースデーカード
「あ……」


若菜が小さく声を上げ、その場に膝をつく。


だけど両手は包丁を握り締めたままで、刃先は旬へ向けている。


旬は若菜を見ろして両手を広げた。


「どうぞ?」


挑発するような声に、若菜が腕を振り上げる。


その拍子に出血が増えてボトボトと血が床に落ちていく。


若菜が降りあげた包丁は旬に届くことなく、手から滑り落ちた。


カランッと虚しく音が響き、若菜の体は崩れおちた。


「あ…‥らた……」


「若菜!」


駆け寄って両手で若菜の体を抱きしめる。


出血が多くて、傷口を押さえても意味がない。


「若菜しっかりして!」


声をかけても若菜は返事をしなかった。
< 174 / 180 >

この作品をシェア

pagetop