バースデーカード
「お前もここで目が覚めたのか?」


和樹の言葉に旬は頷いた。


「あぁ。君たちと同じように目が覚めた。ただ、誰よりも最初に目覚めたってだけだ。1人で出口を探して、出られないことに気がついた。


それから俺は新の姿を見たんだ。きっと俺があいつと双子で、しかも臓器を持っているからだろうな。とにかく俺には新の姿が見えた。会話はできなかったけれど、それだけでおおよその理解はできた」


旬は一呼吸置いてほほ笑んだ。


「殺されると思った。せっかく元気になってこれから勉強して来年の高校受験に備えようってときにだ。病気だったときには死が間近にあったからここまで怖いと思わなかった。


それなのに俺は今生きていたいと思ってるんだ。そのためにはどうすればいいか? 新が選んだ友達を全員殺して、自分は見逃してもらおうと考えたんだ」


「だから最初に武器を調達して、調理室や木工教室に鍵をかけたんだな」


和樹が憎々しげに声を絞り出す。


「そのとおり。俺は新の味方をした。それもあと2人殺せば終わりだ。きっと喜んでくれる」


旬が包丁の先をあたしへ向けた。


咄嗟に体が硬直してしまう。


腕の中にいる結子を抱きしめたまま、呆然として旬を見上げた。


「さようなら」


旬の包丁が猛スピードで降りおろされる。


「やめろ!!」


和樹が叫び、あたしの上に覆いかぶさってきた。


2人してきつく目を閉じる。


ここで2人とも死んで終わりだなんて……!


息が止まったような気持だった。


包丁が降りおろされるまでの数秒が、永遠のように長く感じられる。


恐怖は倍増し、体中から冷たい汗が噴き出した。
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