バースデーカード
心臓は早鐘を打ち、世界が暗転する。


……しかし、いつまでまっても衝撃は襲ってこなかった。


きつく閉じていた目をそっと開ける。


まさか和樹はもう刺されてしまったんだろうか?


嫌な予感を抱きつつ顔を上げると、和樹も同時に顔を上げていた。


え?


どうなったの?


キョトンとした視界に入ってきたのは包丁を振り上げた状態で静止している旬の姿だった。


その後ろには半分体の透けた新が旬の両手をきつく掴んで止めているのだ。


「新!!」


あたしは思わず叫ぶ。


新は一瞬こちらへ視線を向けて、悲しげな表情を浮かべた。


「あ、新……どうして?」
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