バースデーカード
でも、行かないと外には出られそうにないし……。


困って動きが止まっていたときだった。


不意に足音が近付いてきてあたしたちは同時に振り向いた。


薄暗い廊下の奥から人影が近付いてくるのが見える。


あたしと若菜は気がつかないうちにきつく手を握り合っていた。


「誰?」


「警備員さんとか?」


千秋と笑が声をひそめて言う。


でも、警備員ならあたしたちが学校内に入った時点で動いているはずだ。


警備会社への連絡もとっくに言っていてもおかしくない。


人影はどんどん近付いてくる。


あたしはゴクリと喉を鳴らして唾を飲み込んだ。


紀一の歯がカタカタと音を鳴らし始めている。


恐怖で歯の根がかみ合っていないのだ。


「だ、誰だ!?」


和樹が一歩前に出てそう言った。


次の瞬間だった。


影の人物の顔が、月明かりによって照らし出されたのだ。
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