バースデーカード
その人物は笑顔でそこに立っていた。


その瞬間全員が呼吸するのを忘れていた。


嘘でしょ。


こんなこと、あるはずない……。


全身からスッと血の気が引いて行く感覚。


足元がフラついて、立っていることもままならなくなってくる。


「新(アラタ)?」


そう言ったのは若菜だった。


その言葉にあたしは隣の若菜を見た。


若菜の顔に恐怖は浮かんでおらず、むしろ目の前にいる人物への好意がにじみ出ていた。


そんな若菜に危うさを感じて、あたしは若菜の手を更にきつく握り締めた。


「そうか、今日は7月3日か」


そう言ったのは幹生だった。


「今日は新の誕生日だ」


言われてあたしはハッと息を飲んだ。


そういえばそうだった。


「もしかして、バースデーカードを送ってきたのは新?」


笑が呟く。


そうなのかもしれない。
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