バースデーカード
『交通事故の手術、すぐに終わったんだね。だからきっと軽傷だったんだよね?』


エレベーターで指定階まで登っているとき、若菜が呪文のように訪ねてきた。


あたしは若菜の手を握り締めて『きっとそうだよ。大丈夫だよ』と繰り返した。


でも、手術が早く終わったのは軽傷だったからじゃないかもしれない。


手の施しようがなかったからなのかもしれない。


そう思ったが、絶対に口には出せなかった。


そして病室へ入ったとき、あたしの考えが当たっていたことを知った。


そこに寝かされていた人物は新だとわからなかった。


全身包帯で巻かれ、沢山の管でつながれ、医師と看護師に囲まれている。


病室に入ってすぐ、あたしは思わず足を止めていた。


目の前の光景が信じられなくて。


始めてみるその光景に頭がついて行かなくて。


その時、若菜があたしの手を振りほどいてベッドに駆け寄った。


『新!!』


叫び、包帯が巻かれた手を握り締めている。


それを見た瞬間、ようやく体が動いた。


足を前に進め、ベッドの横に立つ。


間近で見ると更に痛々しくて顔をそむけてしまいたくなった。


医師と看護師があたしたちのために一歩下がってくれる。
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