バースデーカード
「幹生……」


笑が苦しげな声で幹生の名前を呼び、近くの椅子に掛けられていたひざかけを幹生の顔の上にかけた。


今のあたしたちにできることなんて、このくらいしかない。


幹生と新は一番仲の良かったはずなのに、どうして……。


親友だと思っていた相手に殺された幹生の気持ちを想像するとやるせなかった。


あたしたち3人は幹生に手を合わせ、それから鍵を確認した。


さっき確認したときに鍵の数が少ないことには気がついていたから、しっかりと確認する。


「調理室と木工教室の鍵はないみたい」


あたしは落胆して言った。


こんなことだろうと、どこかで予感はあった。


あたしたちに武器を入手させないため、相手は徹底的に考えているのだろうと。


そうなると、やはり若菜が怪しく見えてきてしまう。


新の力で教室に入れなくしたのではなく、物理的に入れなくなっているからだ。


こうすることであたしたちを泳がせて楽しんでいるのかもしれない。


考えたくないことだけれど、疑心暗鬼になってしまった。
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