バースデーカード
「どうするの?」


笑に聞かれてあたしは和樹へ視線を向けた。


「仕方ない。もう1度1階へ戻って窓が割れるかどうか試してみてよう」


また振り出しに戻ってしまうのかと思うと、気分は落ち込んでいく。


でも、ここで立ち止まっていてもどうにもならない。


とにかくできることをするしかないんだ。


自分を奮い立たせて体の向きを変えた瞬間、新と視線がぶつかった。


「キャア!」


笑が悲鳴をあげ、腰を抜かす。


いつの間に!?


職員室の中に誰かが入ってくる気配なんてまるで感じなかった。


でも目の前に確かに新がいる。


2人分の血で染まった包丁を握りしめ、かすかに口角を上げて笑っているのだ。


「死んでるかどうか確認しに来たら、獲物が沢山いる」


新はそう言うと、楽しげな笑い声を上げ始めた。


ケタケタケタケタと、不快な笑い声に耳が痛くなる。


それでもあたしたちはその場を動くことができなかった。


まるで金縛りに遭ってしまったかのように立ちつくすことしかできない。


早く逃げないと。


殺される!


頭では理解しているのに、体中が震えて動けない。
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