バースデーカード
しかし1度倒れた新はなかなか起き上がらない。


その隙に和樹があたしの手を握り締めて引きずるようにして職員室を出た。


手を引かれて無理やり足を前に出していると、自然と自分で走れるようになった。


2人して走って走って、2階の端にある教室に飛び込んで鍵をかけた。


「はぁ……はぁ……」


和樹が肩で呼吸を繰り返す。


そして耳をそばだてて、新が追いかけてこないのを確認するとその場に座り込んでしまった。


「ありがとう和樹」


呼吸が整ってからそう言うと、和樹は左右に首を振った。


そして自分の両手をジッと見つめる。


「どうしたの?」


「俺、新のこと殴っちまった」


「それは仕方ないことだよ」


あたしは慌てて和樹の両手を自分の両手で包み込んだ。


ここまで走ってきたのに、2人とも指先は冷たかった。
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