バースデーカード
「あんな状況で、逃げてこられたのが奇跡だよ」


「でも……殴った感触がまるで生きた人間みたいだった」


和樹が震えながら言った。


「え?」


「あいつ、死んでるんだよな? 悪霊なんだよな? なのにどうしてあんな人間みたいな感触があったんだ?」


椅子から手に伝わってきた感触を思い出し、和樹は目を見開いて驚愕している。


あたしは新に触れていないからその感触はわからない。


でも、和樹が嘘をついているようには見えなかった。


「わからないけど、それも錯乱させるためかもしれないよ?」


「本当にそうなのか? あいつ、本当に死んでるのか?」


和樹の質問に、あたしは答えられなかった。


一瞬、新は本当に生きているのではないかという考えた脳裏をよぎる。


でもそんなハズはない。


あたしたちは新の葬儀にも参加したのだから。


和樹はいつまでも自分の両手を見つめて、震えていたのだった。
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