バースデーカード
ここからじゃなにがどうなっているのかわからない。


だけど新がまだそこにいることだけは確かだった。


出ていくことなんてできない。


ボソボソと、幹生の震える声が聞こえてくる。


恐怖で声が出ないのだとわかった。


俺も、怖くて出ていくことができなかった。


普段荒い言葉遣いをしているのは、自分の弱さを隠すため。


そんなの自分でもわかっていたし、きっとみんなも気がついている。


幹生だって、きっとわかってくれる!


ギュッと目を閉じたとき、幹生のうめき声が聞こえてきた。


それは嫌な声だった。


生命が最後に絞り出すような声。


俺の背筋は寒くなり、吐き気がこみ上げてくる。


手で口を押さえてどうにかやり過ごすと、足音が遠ざかっていくのが聞こえてきた。


出ていったか……?


それでもしばらくその場から動くことができなかった。
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