バースデーカード
新が戻ってくるかもしれないと思うと、どうしても勇気がでなかった。


他のみんなはどうしただろう?


どこに逃げたんだろう?


1人でいることが途端に心細く感じられた。


俺1人で新に立ち向かうことなんてできない。


できればみんなと合流したい。


その思いから、どうにか恐怖心を押し込めてパーテーションの奥から顔を出した。


職員室の中は静かで、なんの物音も聞こえてこない。


薄闇の中周囲を確認してみるが、新の姿はないようだ。


やっと安心して立ちあがり、パーテーションから出てきた。


「幹生、いるのか?」


小さな声で話しかける。


幹生からの返事はない。


新が入ってきた方のドアへと足を進めると、ツンッと鼻腔を刺激する鉄の匂いが漂ってきて、足を止めた。


その匂いの中にはアンモニア臭も混ざっているようで、普段かいだことのない臭いに顔をしかめた。


嫌な予感がする……。


心臓はドクドクと早鐘を打ち始める。


口の中はカラカラに乾いていた。


そんな中一歩一歩足を前に進め、そして倒れている幹生の姿を見つけた。


「っ!!」


声にならなかった。
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