バースデーカード
耳を澄ませてみても他に物音は聞こえてこない。


今の音は確かに応接室からだった。


確認しに行った方がいいか?


心の中ではそう思うものの、実際は恐怖で足が一歩も動かなくなっていた。


出口へ向けて歩こうとすると、俺の両足はコンクリートで固められたように固くなる。


「ちっ」


強がりで舌打ちをする。


情けなさがこみ上げてきたが、仕方ない。


俺は体の向きを変えて再びパーテーションの奥へと逃げたのだった。
< 76 / 180 >

この作品をシェア

pagetop