バースデーカード
助けに行こうと腰をあげた瞬間、和樹があたしの手を握り締めていた。


「1人で行っちゃダメだ。若菜は新の仲間かもしれないんだから」


そう言われて動きを止める。


そうかもしれない。


でも、それならどうして若菜は1人で泣いているんだろう?


もしかして女子トイレに新もいるのかな?


それにしては若菜の泣き声はずっと聞こえ続けていた。


新が一緒にいたとすれば、泣きやんでもいいのにと思う。


「一緒に行こう」


あたしは和樹へ向けてそう言い、空き教室を出た。


廊下に新の姿がないことを確認してから教室から出ると、泣き声は大きく聞こえ始めた。


これだけの声量で泣いていれば、すぐに新に気がつかれそうだ。


あたしは空き教室の隣にある女子トイレへと入っていった。


月明かりに浮かび上がるトイレは不気味で、温度が一気に下がったように感じられた。


ほとんどの個室が閉まっている中、一番奥の個室だけドアが閉められている。


泣き声はそこから聞こえてきていた。
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