バースデーカード
この声が若菜であるとわかっているから近づくことができるけれど、普通の夜の学校だったら怖くて近づけなかっただろう。


あたしは和樹としっかりと手を握り締め合って、個室の前に立った。


「若菜?」


外から声をかけると、不意に泣き声は止まった。


しかし、返事はない。


「若菜だよね? あたし、結子だよ。和樹も一緒にいる」


更に声をかけると、鼻をすする音が聞こえてきた。


和樹が手を離しあたしを、守るように立ちはだかった。


個室から何が出てくるかわからないと言った雰囲気だ。


「……結子?」


個室から聞こえてきた声にハッと息を飲む。


今の声は若菜で間違いない!


ひどく涙声になっているけれど、あたしが若菜の声を間違えるはずがなかった。


だって、8人の中で一番仲がいいんだから。


「そうだよ若菜! 出てきて!」


思わず声が大きくなる。


すると閉じられていたドアの鍵が開く音が聞こえた。


和樹が身構える。
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