恐怖ダウンロード
夢に言われてあたしは改めて自分の体を確認した。


しりもちをついたせいでお尻は少し痛いけれど、他は大丈夫そうだ。


「そう……だね」


「それならよかったじゃん!」


夢が明るい声で言う。


その様子に少しムッとしてしまいそうになる。


損失を与えられるのはあたしだ。


さっき怖い女を見たのだってあたしなのに……。


「靖子、靖は入院までしたんだよ? それでも損失はたったこれだけ」


「わかってるよ」


ムスッとしたまま返事をする。


夢の考えている通り、損失がこれだけのことならアプリを続けてもいいと思っている。


ただ、あたしのことを考えているのかどうかわからない、夢の態度に苛立ったのだ。


「靖の次は陸。陸は口から虫を吐きだしたよね」


あたしは小さな声で言った。


あんな恐怖を味わうくらいなら、幽霊を見る方がマシかもしれない。


あたしは気持ちを落ち着かせるために水を一口飲んだ。


その瞬間舌の上に違和感があって顔をしかめる。


下の上で何かが動いている。


咄嗟にそれを吐き出していた。


口の中から出てきたのは小さな虫だ。
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