恐怖ダウンロード
説明している間にも教室内は混沌としてきて、慌てて先生を呼びに行ったり、救急車を呼ぶ騒ぎに発展していた。


あたしはのんびりとその様子を見つめた。


自分でタバコを飲み込みながら苦しむ美紀。


あたしたちを笑っていたクラスメートが駆けまわる様子。


地獄絵図のようなそれは、あたしにとって最高のパフォーマンスだった。


「でも、いいの?」


「なにが?」


夢の言葉にあたしは首をかしげる。


「損失があるでしょう?」


そう言われて一気に現実に引き戻される気分だった。


確かに損失のことは確かに気になっている。


だけど、それを考慮しても美紀にはひどい目にあってもらいたかったのだ。


「大丈夫だよ。だって、このアプリはあたしを傷つけない」


あたしは胸を張ってそう言った。


本当はどうなのかわからない。


この先もずっとあたしに危害が及ばないとも、言いきれない。


それでも、今はそれを信用することにしたのだ。


視線を美紀へ戻すと、手の中にあったタバコはなくなっていた。


すべて飲み込んでしまったのだろう。


陸も愛子も靖も、そして美紀自身も蒼白になって立ちつくしていたのだった。
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