恐怖ダウンロード
「ねぇ、次は誰にする? どんなことをする?」


夢は目を輝かせて言う。


「そうだね、次も考えなきゃだよね」


愛子にはまだなにも恐怖を与えていないし、靖や陸への恐怖もあんなものじゃ足りない。


もっともっと、苦しめてやるつもりだった。


2人して色々と想像しながら歩いていると、作業着姿の男とすれ違った。


男は50代前後で、右手にタバコを持っている。


歩きタバコをしている人がまだいるなんて。


そんな風に思った時だった。


すれ違いざまに男が右手をあげたのだ。


タバコの火が視界に入り、咄嗟に逃げようとする。


それを追いかけるように近づいてくるタバコ。


注意しようとしたとき、タバコの先が制服にひっついた。


一瞬で焦げたにおいがする。


「ちょっと!」


「え? あ、ごめん!」


あたしの声に驚いた男性が立ち止まり、ようやくタバコがあたしの制服を焦がしたことに気がついた。


しかし男性は早口で謝ったかと思うと逃げてしまったのだ。


あたしは唖然として男の後ろ姿を見送る。
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