恐怖ダウンロード
「最低」


夢が男の後ろ姿へ向けて呟く。


その時だった。


スマホが震えて『損失を与えました』の文字が表示された。


あたしと夢は目を見かわせる。


そして思わず声を上げて笑った。


美紀に対してあれだけのことをしたのに、あたしへの損失はたったこれだけ。


制服が焦げたのは痛いけれど、ブラウスくらいなら安く売っている。


火傷もしていない。


やっぱりこのアプリは利用者を大切にしてくれるみたいだ。


「ねぇ靖子、次はあたしに決めさせてよ」


夢があたしのブラウスに空いた穴を見て言った。


夢はきっとあたしよりももっと過激なことを記入するだろう。


でも、このくらいの損失なら大丈夫だ。


あたしはニヤリと笑う。


そして「いいよ」と、頷いたのだった。
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