人権剥奪期間
そのとき、竜也の右手があたしの腹部にあてがわれていることに気がついた。


そしてその手は赤く染まっている。


「え……?」


首をかしげた瞬間、なぜか足から力が抜けていって、その場に膝をついていた。


そんなあたしを見下ろしている竜也。


「おい、撮れたか?」


竜也は誰もいない空間へ向けて声をかけた。


すると机の下に隠れていた3人の男子生徒が出てきたのだ。


その中の1人はカメラを構えている。


「バッチリ!」


「よし、これでリアルなシーンができたな」


「こんなことよく考えたな竜也!」


3人とも興奮した声を上げている。


リアルなシーンってなに?


そう質問したかったけれど、声がでなかった。


ジワジワと溢れ出している血液が、あたしから体温を奪っていく。


「ほんと、舞が商品になってくれて助かったよ。おかげで最高の映画が撮れそうだ」


竜也がしゃがみこみ、あたしの頭をなでながら言った。


最高の……映画?


「あ、ごめん。このままじゃ苦しいよな?」


気がついたように竜也は言い、突き刺さったままの刃物の柄を握りしめた。
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