人権剥奪期間
聡介はベッドの端に座っていて、花子は三角座りで床に直接腰を下ろしていた。


「舞と連絡取れないの?」


「あぁ。誰がメッセージを送ってもダメだった」


聡介が答える。


「だから行っちゃダメだって行ったのに」


珍しく花子が声を荒げている。


その目はよく見ると少し充血しているのがわかった。


「舞を探さなきゃ」


「探したってきっともう遅い」


花子が言う。


「なんでそんなこと言うの? 舞は図書室に呼ばれてたよね? どこにいるかわかってるんだから、行ってみなきゃ!」


「それで死体を見つけたらどうするの?」


その質問にあたしは絶句してしまった。


図書室へ行って、そこで舞の死体を見つけたら?


それは一番避けたい事態だった。


「結局彼氏にまで裏切られたんだってわかって、ショックを受けてここに戻ってくるの?」


花子の言葉が突き刺さる。


違う。


そんなことのために舞を探し出したいわけじゃない。


ちゃんと無事を確認したいだけ。
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