人権剥奪期間
☆☆☆

誰もついてきてくれないかもしれないと思ったけれど、あたしの後ろを大志がついてきてくれた。


その後に花子も保健室を出てくるのが見えた。


正直ひとりじゃ舞の死体を見つけたときにどうすればいいかわからなくなっていたかもしれないから、安心した。


3人で無言のまま図書室へ向かう。


ドアの前まで来て立ち止まり、あたしは深く息を吸い込んだ。


どうか無事でありますように。


舞と彼氏が身を寄せ合って隠れている様子を想像する。


そして勢いよくドアを開いた……。


その瞬間視界に飛び込んできたのは真っ赤な血だまりだった。


倒れている女子生徒の体を包み込むようにして広がっている血。


女子生徒が舞だとわかった瞬間、絶叫していた。


この悲鳴は誰の声?


耳をつんざくような声はどこから聞こえてくるの?


そんなに叫んだら他の生徒たちにバレちゃう。


早く静かにして!


わからなくて混乱していたとき、花子に口をふさがれてそれが自分の悲鳴だったと気がついた。


どうにか声を押し殺し、目の前の光景を見つめる。


「やっぱり、殺されたんだ」


花子が悔しそうに歯軋りをする。


なんで?


だって、舞は彼氏と会ってきたんだよね?


好き同士だから付き合ってたんだよね?


グルグルと無駄な思考回路が回り続ける。


そうしている間に大志が図書室の窓を開けていた。


雨の前なのか、生ぬるい風が吹き込んできて頬をなでた。
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