人権剥奪期間
☆☆☆

それから狩の時間まで、どうやって過ごしたのかあまり覚えていなかった。


部室棟まで移動したことは覚えているから、またそこで長い時間を過ごしたのだろう。


狩の時間が開始されてからふと我に返ったあたしは両手を見つめた。


まだ舞の血がこびりついている。


トイレの個室から出て手を洗っていると舞の死に顔がよみがえってきた。


穏やかな表情だった。


彼氏に会えて本当に嬉しかったのかもしれない。


だけどその彼氏は武器を持っていた。


舞を殺すための武器だ……。


考えると胸が痛くてその場に座り込んでしまいそうになった。


蓄積した心の澱があたしの体を覆いつくしてしまいそうになっている。


でも……舞が殺されたことである閃きを感じていた。


あたしたちも武器を持てばいいんじゃないだろうかと。


今まであたしたちは必死に逃げるだけで、武器を手にしたことはなかった。


あたしたちは商品だからそんなこと許されないと最初から思い込んでいたのだ。


でも、考えてみれば聡介が怪我をしたのはあたしを助けるためだった。


その時、普通の生徒たちに攻撃を加えているのだ。
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