人権剥奪期間
☆☆☆

部室棟の渡り廊下を渡り切り、本館の廊下を確認する。


今日は天気が悪くて月明かりも差し込んでいない。


周囲は想像以上に薄暗く、気味が悪かった。


あまり視界が聞かない中、聴覚だけを頼りにゆっくりと前進する。


自分の足音と緊張した呼吸音がやけに大きく廊下に響き渡り、背中にベットリとした汗が流れていく。


誰とも遭遇せずに2階へと降りる階段にたどり着いた。


そっと下を確認し、人影がないのを見て降りていく。


2階まで降りてきたとき教室からガタンッと物音が聞こえてきて身を縮こめた。


「なんだよ誰もいねぇじゃん! どこに隠れてんだよ!」


怒号に続いて椅子や机を蹴り飛ばす音。


その声には聞き覚えがないから、1年生の受け持ちじゃない先生なんだろう。


あたしは気づかれないよう息を殺して再び階段を折り始めた。


階段で鉢合わせすると逃げ道がない。


階段を駆け上がって逃げるほどの体力もなかった。


どうにか1階まで降りてきて、また廊下を確認する。


1階はとても静かだった。


保健室の前を通りかかったとき聡介のことが気になったが、一旦通り過ぎてそのまま木工教室へと足を進めた。


ドアの開閉音が響かないよう、慎重に木製のドアを開ける。


教室の中は廊下よりも更に暗くてほとんどなにも見えなかった。


そっと教室内に入り、ドアを閉める。


その場に座り込んで目が慣れるのを待った。


準備室の方へ視線を向けてみるが、今日は誰もいないようでホッとした。
< 127 / 182 >

この作品をシェア

pagetop