人権剥奪期間
☆☆☆

大志と花子が2人で武器を移動させている間、あたしは聡介の足の様子を確認していた。


怪我をした当初に比べれば随分とマシになっているようで、少しずつ歩けるようになってきている。


「よかった。まだ走れないかもしれないけど、順調に回復してるね」


「あぁ。ごめんな、あれ以来ぜんぜん助けられなくて」


その言葉にあたしは左右に首を振った。


「そんなこと気にしなくていいよ。部室棟にいれば生徒たちは滅多に来ないし、こうして武器を持てることがわかったから、安心して?」


あたしはそう言ってハンマーを聡介に手渡した。


「これは聡介の分。今のところ保健室は襲撃されてないけど、念のために」


「サンキュ」


生徒たちの登校時間になるまでつかの間を仮眠を取り、1時間目の授業が行われている間にあたしと大志と花子の3人は保健室を出た。


「どこに行くの?」


前を歩く大志に声をかけると、大志は銀色の鍵を見せてきた。


「それ、どこの鍵?」


花子もなにも聞かされていないようで、不振そうな声を出している。


「保健室よりも安全そうな場所の鍵だ」


大志はもったいぶるように答える。


あたしと花子は目を見交わせて首をかしげた。


保健室、部室棟と安全そうな場所はいくつか見つけているけれど、まだあっただろうか?
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