人権剥奪期間
☆☆☆

必要なものすべてを屋上へ移動し終えたのは1時間目の授業が終わる5分前のことだった。


調達した武器などもあったため、思ったよりも時間がかかってしまった。


あたしたちが移動を開始したのを見て保険の先生はひどく心配そうな顔をしていたけれど、こればかりは仕方なかった。


あたしたちにとって保健室はもう安全な場所ではないのだから。


大志が考えていたとおり、ここには生徒たちは寄ってこなかった。


休憩時間開始のチャイムが鳴っても、屋上へ続く階段を上がってくる足音は聞こえてこない。


こんなに安心できる休憩時間を過ごしたのは久しぶりのことだった。


だけど、安心ばかりもしていられない。


ここは屋外だから、悪天候になると同じ場所にとどまっていることができなくなるのだ。


しかも今は梅雨の時期で天気は変わりやすかった。


6時間目が終わり、生徒たちに早く帰るよう促すアナウンスが聞こえてきた後、ついに天候は悪化しはじめた。


どんよりと重たい雲に校舎が覆われ始めたのだ。


「狩の時間までまだ少しある。移動するか、それともビニールシートでも持ってきて屋根を作るか、どうする?」


大志の言葉にあたしたちは目を見交わせた。


これだけの荷物を持ってまた移動するのは大変だ。


「ビニールシートなら、3階の空き教室にあった」


壁を背もたれにして座っていた聡介が言った。


「最初に隠れていた場所?」


「そうだ。そこならここからでもすぐに行ける」


その言葉で決定した。
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