人権剥奪期間
あたしと大志は2人で屋上を後にして3階の空き教室へと向かった。


あたしたちが保健室に移動した後荒らされていたようだから、ちゃんとビニールシートを見つけることができるかどうか心配だった。


しかし、その心配は無用だったようで、散乱する小道具の隙間から青い色のシートが見えていた。


大志はそれを引っ張りだし、あたしはロッカーから古いホウキを何本か手に持った。


足に絡まるように落ちていたロープも拾い、2人で来た道を戻る。


今はまだ狩の時間になっていないから、屋上への鍵は開けたままになっていた。


「そのビニール、どうやって屋根にするの?」


花子に聞かれてあたしはホウキを見せた。


「これを三角になるように立てて、上部をロープで固定するの。その上からシートをかぶせたら簡易テントになる」


それは以前動画で見たものだった。


災害時などにも役立つ知識だ。


動画で見たとおりに組んでいくと、ものの10分ほどで簡易テントは完成した。


中は少し狭いけれど、座っていればどうにか入れるスペースがある。


それからしばらくすると雨が降り出してきて雨音で外の音はすべてかき消されてしまった。


「これじゃ狩の時間が始まってもわからないな」


聡介が呟く。


大志がどこから調達してきたのは小型ナイフを取り出してテントに小さく穴を開けた。


小指ほどの隙間から外の様子を伺う。


「大丈夫。ここ広いから全力で走れば逃げることができる。その時にはわざとテントを壊すぞ? 中にお前が残ってるってバレたら狙われるからな」


大志の言葉に聡介は黙って頷いたのだった。
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