人権剥奪期間
メッセージアプリのIDはたしかにお母さんのものだった。


でも、このメッセージを信用していいのかどうかはわからなかった。


もしも、舞みたいになったら?


そんな気持ちが浮かんでくる。


まさかお母さんたちがあたしを殺すはずがない。


でも、もし、お母さんのスマホを他の誰かが操っていたら?


その可能性はあると考えていた。


この誘いに乗って昇降口へ移動すると、何が待ち受けているのかわからない。


「返事はしないほうがいい」


そういったのは花子だった。


花子の目は相変わらず鋭くて、他人を射抜くような目をしている。


「……そうだよね」


わかっていたことだけれど、落胆してしまう。


あと4日間は誰のことも信用しちゃいけない。


そう思い、あたしはスマホの画面を閉じた。


「大丈夫だよ、これが終わったら帰れるんだから」


射抜くような目をしていた花子が不意にそんなことを言った。


あたしは驚いて花子を見つめる。


「ここまで来たんだから、絶対に生きて終わるでしょう?」


「うん。そうだね」


あたしは力強く頷いたのだった。
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