人権剥奪期間
「聡介。移動しよう」


「あぁ……」


声をかけると聡介はテントから出てきた。


そしてまだ泣いている花子を見て視線をそらせる。


「花子」


名前を呼ぶと、花子は左右に首を振った。


「ここにいたら先生に捕まるよ」


そう言っても花子は動こうとしない。


あたしと聡介は目を見交わせた。


今はなにを言っても無意味なのかもしれない。


ここで時間をとられれば3人とも捕まる可能性もある。


「あたしたち保健室にいるから。なにかあったら来て。それから屋上の鍵は絶対にかけてね」


あたしは憔悴している花子にそう言い残し、聡介と2人で屋上を後にしたのだった。
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