人権剥奪期間
それから何時間くらい経過しただろうか?


スマホのバイブ音で目を覚ました。


ポケットから取り出して確認してみると、何件ものメッセージや電話が入ってきているのがわかった。


そのどれもが見知らぬ人たちからのものだ。


だけど1件だけ、ついさっき届いたメッセージに目が奪われた。


「花子からだ!」


あたしは聡介に画面を見せた。


「本当だ、生きてたんだな」


聡介の表情がパッと明るくなる。


《花子:今、3階の空き教室にいる》


そのメッセージに目を見交わせた。


最初の頃逃げ込んでいたあの空き教室のことで間違いなさそうだ。


「どうする? こっちも居場所を伝えてみる?」


聞くと、聡介は難しそうに眉根を寄せた。


「そのメッセージが本物かどうかわからない。こっちから花子に会いに行ったほうが安全じゃないか?」


「それじゃ、今から移動する?」


「そうだな。空き教室ならここから近い」


そう言ったものの、相談室の外からはまだ人の足音が聞こえてきているから、すぐに出て行くことはできなさそうだ。


警察や先生たちはあたしたちを捜しているのだろうから。
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