人権剥奪期間
聡介が先を歩き、あたしはその後について空き教室へと足を踏み入れた。


その瞬間散乱している教室内に違和感を覚えた。


もともと荒らされていたけれど、今は更にひどい有様になっているのだ。


教室内は足の踏み場のないくらいにあちこちに物が散乱している。


「花子、いるの？」


小さな声で名前を呼ぶ。


しかし返事はない。


静かな教室内に、２人分の呼吸音だけが響いている。


「返事しろよ」


聡介の声は震えていた。


あたしは足元に転がる文房具を足でどかしながら慎重に教室内を調べた。


そのときだった。


色鉛筆のケースを足でどかしたとき、その下から血痕のようなものを見つけて動きを止めた。


「え……」


小さく呟き、あたしはその血を凝視する。


「これ、血か？」


聡介が気がついて呟く。


あたしは返事ができなかった。
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