人権剥奪期間
☆☆☆

あたしたちはいつも逃げてばかりだった。


鍵をかけて、安全な場所でやり過ごしてきた。


でも、もう違う。


あたしは先生を1人殺したのだ。


後は何人殺したって同じこと。


不思議と恐怖心はなかった。


3階の空き教室の前に立ち、あたしは先生たちが来るのを待った。


花子の死体を捜して、あたしたちがここに来ることはきっと想定内だろうから。


それから30分ほどして、想像通り1人の先生が階段をあがってやってきた。


隠れもせずに教室の前に立っているあたしを見て、一瞬大きく目を見開いた先生。


しかし次の瞬間にはこちらへ向けて駆け出していた。


「商品が隠れもせずに待ってるなんて、どうしたんだ? もう降参したのか?」


男の先生は口角を上げて大きな声で笑いながら近づいてくる。


あたしは両足を踏ん張り、そして両手でハンマーを強く握り締めた。


走ってくる先生の頭上めがけて、振り下ろす。


ガンッ!


鈍い音と、骨が砕ける感触。


先生の高笑いは途中で消えて、そして倒れこんだ。


頭部がつぶれた先生はもうピクリとも動くことはなかった。


「行くか」


聡介が後ろから声をかけてきた。


その手には同じようにハンマーが握られている。


これは花子が持って逃げていたものだった。


「行こう。今度はあたしたちが狩る番だよ!」
< 172 / 182 >

この作品をシェア

pagetop